2ちゃんで
こんな記事が。
バイスタティックレーダーの事ですね。以前私がやってたお仕事の内容です。
なにもかもが懐かしい・・・。w
1台の送信機から出た電波を別の(複数)の受信機で受けようというものです。
これ自体は簡単なことで、初期のレーダーも基本的に送信機と受信機が分かれてました。
では、なにが難しいかというと、今のレーダーは方位の他に「距離」を求めなければいけないということ。
現行のレーダーは「パルスレーダー」と言って、送信した時刻と、それが戻ってきた時刻の差から距離を割り出しているのです。
(ドップラーレーダーの場合は、周波数変移から速度を出して、そこから2次的に距離が出せますが、精度が劣ります。)
これが、ミリ秒単位の話ですから、送信機と受信機が離れていると、その時刻同期が大変なわけです。
まぁ、以前テストしてたとかしてないとか・・・げふんげふん。
なにが良いかというと、
・対ステルス航空機:レーダー波を乱反射するステルス機も、反射角度によってはよく見えるので、探知しやすくなる。
・自分がステルス:受信設備は電波を出さないので、レーダー波を追ってくるミサイルが効かない。
てなところでしょうか。
さて、上の発言でもわかるように、ステルス機とは、完全に見えない飛行機ではありません。
そりゃそうでしょう。真下からなんかだと反射面積大きいのは当たり前です。
それに、電波は光波に比べて波の性質が強いため、所謂、干渉という現象も起こします。
(周波数の低いMOVAの方がFOMAより建物内の受信状態が良い理由です。)
金属体という誘電率の高い物体であるだけで、自分が発信するかのように振る舞います。
ステルスの基本は、光のように直進してきた電波を、なるべく元の方向(レーダーの方向)へ「反射」させない事ですので、光波的振る舞いが前提です。
(現職時に、将来兵器のレポートで、低周波レーダーを提案したら(所謂UWB HF。積算させて流れ星を追尾した実績もある。)
一笑に付されました。IRSTとか光波の時代に何を言ってるんだ・・・って感じで。)
つまり、「見えにくくなるように工夫されている」飛行機とお考えください。(特に前方から)
探知だけで言うなら、それほど難しい話ではないと思います。
(過去、渡り鳥の群れにスクランブルを掛けることもしばしばありました。人の目でレーダーコンソールを見てると、そこまで見えるものです。
今はほとんどデジタル化されてしまいましたが・・・古いものが良いという場合もあるのです。)
探知距離が短くなるということはあっても、それが、攻撃目標の直前まで見えないということは先ず無いかと思います。
ということで、攻撃する側から言っても、見つからないことを前提にした運用はありえません。
じゃあ、ステルスの最たる利点がどこにあるかというと、対探知レーダーではなく、対追尾レーダーにあります。
追尾レーダー、つまり、ミサイルを誘導するためのレーダーです。
(探知レーダーは360°全ての方向を見なければいけないので、それほど精度は高くありません。
常に相手の方を向いて、ひたすらその位置を正確に割り出すのが、追尾レーダーです。)
見えにくいということは、継続追尾がしにくい、所謂ロックオン状態に入り難く、外れやすいということです。
ミサイルを発射するためには、相手の動きに常に追従して、なおかつ正確な位置が分からなければいけません。
(ロックオンしてない目標に攻撃しても意味はありません。ミサイル自身が、誰を狙っているのか分からないからです。)
となると、実質的に「有効射撃距離」が短くなるわけです。
対航空機にしてみれば、同じ性能のミサイルにしても、相手が撃つ前に撃てるわけですし、
対地上ミサイルにしてみれば、その防御範囲が狭くなり、逃げやすくなるわけです。
となると、元電子戦屋さんから言わせると、対ステルス対策として、地上探知レーダーを強化することはあまり優先度が高い事項ではありません。
むしろ航空機搭載レーダーや、各種対空ミサイルのレーダーこそ優先度が高いかと。
特に、自衛隊の運用法を考える場合、航空機搭載レーダーこそ急務かと思います。
(逆に、日本がステルス機を欲しがるのもそこです。他所の国に侵攻するという目的よりも、
相手に先に撃たせない、あるいは敵の兵器の性能を相対的に低下させるというとこがミソです。)
よく、「機体は安いのを買って、日本製のアビオニクスで魔改造」なんて発言を聞きますが、
ごめんなさい。日本製のアビオはカスも同然です。
電子機器の製造が得意な日本だから、アビオもレベルが高いはずだという思い込みでしょう。
特に機器を動作させるための運用プログラム関連は最悪ですね。
そりゃそうです。アメリカやロシアは実際に使ってデータ蓄積してるんですから。
ロシア製の兵器があまりデジタル化されてないのをバカにしてはいけません。
機械としては良く作り込まれてますし、多分に核戦争や局地戦を想定してあるので、頑丈さと整備性は折り紙付きです。
なにしろ、使用目的に適合してるかどうかを重視してきたお国ですから、オーバースペックや余計な機能は一切ありません。
日本の現代兵器は機能は豊富にあるのかもしれませんが、じゃあ、その機能をどのように動かすのかといったデータがありません。
使えない機能など、システムとしては無意味なのです。
例えば、某無敵の盾はレーダーとしては古い設計ですし、コンピュータも最近は唯の民生用ワークステーションですが、
そこに入っている運用プログラムがシステムの性能を高めていると言って良いでしょう。
実は兵器にとってはこれが一番重要で、アメリカから供与される、あるいはライセンスされるものの殆どは、肝心の運用プログラムが無い、あるいは古いです。
中東へ行った輸送機に、自己防御用のフレア装置が緊急調達されましたが、肝心のその撒き方(有効なタイミングとか量など所謂運用パラメータ)
は売って貰えませんでした。
こんな記事もありますが、個人的には機体などどうでも良くて、
搭載されてるレーダーと射撃管制プログラムが良いのを選定してくれればと思ってます。
(最新版のF-15とかいいなぁ・・・APG-63V(2)とか付いてると最高。そういう意味では、F/A-18にAPG-79でもいいなぁ。オーストラリアにはもう下ろしてるし。
タイフーンの統合電子戦装置も以前シミュを見た限りでは良さげな感じではありましたが、性能は分かりませんね。まぁ、外挿できる米製のが安全かと。)